ご依頼減額問題 問題点について
- 議会後の5億円ご依頼減額問題 その問点について 2020年9月5日
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2020年9月5日
真宗大谷派宗議会 同朋社会をめざす会
代表 藤井学昭議会後の5億円ご依頼減額問題 その問題点について
この度の常会は、コロナ禍のなか大変変則で、議会と言えない形で議会(宗議会は6月17から19日、参議会は21・22日)が開催され、2020年度予算が可決されました。ところが、内局は、独断で、可決されたご依頼額からさらに5億円減額して、全国25教区(改編後)にご依頼したのです。
私たちは、議会で予算が成立したのちに、恣意に5億円を減額してご依頼することは、宗憲違反であり議会無視であると、7月20日、総長宛に公開質問状を提出し、7月27日までの書面での回答を要求しました。
公開質問状の論点は、議会終了後10日もしない内に、さらなる5億円減額を判断せざるを得なかった理由は何か。議会を経ていない41億8千万円余りのご依頼額の正当性を担保する法規上の根拠は何か。5億円の歳入不足分を如何なる方途で補填しようとするのか。また、可決されたばかりの事業の見直しについて言及しているが、新年度当初から事業の見直しをせねばならないような予算を提出した責任をどう感じているのか、というものです。
ところが、書面での回答はなく、総長より、次回の宗政調査会(8月19日~21日)で説明したいという申し入れがありました。
ここに、8月19日午後に持たれました総長との質疑応答を通して明らかになった問題点を記し、皆さんのご批判を仰ぐものであります。但馬総長の説明の主旨
議会前から、議会に提出した前年比5億円減額の更なる5億円の減額を考えていたが、最終判断は議会後の6月29日であった。しかし、そのことにより議会無視をしたつもりはないし、宗憲に違反しているとは思わない。なぜなら、予算とご依頼は違い、ご依頼額については、議会でお認めいただいた予算額の枠内において、その時の状況を勘案して内局が決める専権事項であるから。
問題点の指摘
1.予算とご依頼額とは違うという問題点
◎ 究極の議会無視
総長の予算とご依頼額とは違うという説明は、予算項目としての相続講金等の合計額と全国への総ご依頼額の金額は違うということです。ところが、一方で、相続講金等とご依頼額の間には密接な関係はあるのかという問いに対しては、あることも認めています。
実際、20年度予算では、5億円減額される前のご依頼額は、46億8千万円あまりで、相続講金等の合計額と近似になります。
相続講金等と、ご依頼額とは、深く関わっていることを認めていながら、相続講金等と、ご依頼額は違うというのです。
これをどう理解すればいいのでしょう。このことは、ここに、超(スーパー)議会無視の視点を持ち込むことで理解できます。つまり、総長の主張は、議会で可決された相続講金等の予算によるご依頼額があったとしても、その額に拘束されることなく、ご依頼額については、内局の専権事項として独自に判断することが許されるというものなのでしょう。総長にとって、ご依頼額は、議会で可決された相続講金等に依拠するものではなく、内局が独断で定めることが出来るものなのでしょう。その時、議会で可決された相続講金等の予算は、全く議決の意味を失い、議会の最高議決機関としての機能は否定されることになります。議会は、相続講金等の審議をして可決したが、内局は、それに囚われず、ご依頼を定めますというのですから。これでは、議会で、可決した相続講金等の意味がありません。究極の議会無視です。◎ 減額も増額も内局の胸三寸
このたび、内局は、独断で5億円の減額をしましたが、減額できるということを認めることは、同様に議会の議決と関わりなく、増額が出来るということに道を開くことになるでしょう。そのことを質すと、総長は、予算内の減額は出来るが、予算を越えての増額は出来ないと答えました。支出が予算を越えることは問題だということは分かりますが、歳入超過については、大いに超過完納を奨励しているのですから、大いに望ましいことではないでしょうか。増額が出来ないという歯止めをかける法規でもあるなら示してほしいと要求しましたが、示されることはありませんでした。それは、当然でしょう。なぜなら、減額してもいいという法規など無いのですから、増額についてもしかりであります。しかし、減額だからとこれを認めるということは、いつか、議会の承認なしに増額する内局が出てきた時、反対する根拠を持ちません。
◎ 宗憲第94条違反
議会で可決したご依頼額を反故にして、議会に諮らず、歳入において、大きな割合を占めるご依頼額を、内局が独断で決めることは、宗憲第94条「本派の財政は、両議会の議決に基づいて、これを処理しなければならない。」という条文に違反し、宗憲違反は明白であります。
この指摘に対して内局は、ご依頼額は議会に諮る必要がないと反論するでしょうが、ご依頼額という予算項目はなくても、相続講金等を議会に諮ることが、自ずとご依頼額を議会に諮っていることになるわけです。― 参考として ―
私たちの教団の歳入予算項目は、義務金としての「賦課金」、研修会同朋会館等参加費不動産収入等の「冥加金」、諸願事授与物等の「礼金」、読経志懇志賽銭等の「諸懇志」、その他「雑収入」は、細目まで明瞭です。
そして、最も大きな額を占める「相続講金」及び「同朋会員志金」、その他教務所扱いの諸懇志等を入れて、全国へのご依頼額として算出されます。ここではそれを、分かり易く簡略にするために、相続講金等としておきます。なお、相続講金といっても、殆ど今は、その意味も歴史も風化している地域もあるかと思いますが、本来、宗門護持に一人ひとりが参画した制度を表わすものです。2.ご依頼額は内局の専権事項という問題点
◎ 専権事項という表現は、我が宗門に相応しいか
総長は、説明で、内局の専権事項と何度も言っています。しかし、そもそも、宗門の諸法規のなかに内局の専権事項などと言う条文があるのでしょうか。あるならその事が記されている法規上の根拠を示していただきたいと問うと、慣例でやってきたという答弁であります。
私たちの宗憲は、厳しい本山問題を通して、手に入れたものです。その前文に宗門運営の根幹は、一切の専横専断を許さず、同朋の公議公論を尽くして行う同朋公議にあると謳いました。
一方、専権を辞書で引くと、物事を思いのままに出来る権利とあります。同朋公議の対極にある言葉です。専権事項とは言っているが、同朋公議の理念からは、そこで言い当てようとしているのは、単に内局に付与されている権限や権能ということであり、それ以上の何かがあるわけではありません。今回のことで言えば、ご依頼額を決める権限が内局にはあるということです。そして、ご依頼額を決めることは、内局の権限であると同時に、内局の義務でもあります。つまり、内局の任務と同義であるといえるでしょう。その他にも、予算の議会への提出、人事についても同様です。
それを、専権事項と表現することで、あたかも、その業務は、内局の聖域で、他の何ものも手出しができないというニュアンスを生み出してはいないでしょうか。この度の、総長の使用例も、ご依頼は内局の独占であり、議会さえも手出しは出来ないのだという了解にも思えます。ご依頼は、予算で議決された相続講金等と、5億円も違っていても内局の専権事項であるから、宗憲違反には当たらないということなのでしょうから。
同朋公議を、宗門運営の基本に据えている宗門にとって、専権事項という表現が相応しいのか、権力を行使する立場にあるものは、言葉にもっと厳格であるべきでしょう。◎ 各教区へ配分するご依頼額を定めるのが、内局の権限であり義務
ご依頼額を決定するのは、内局の権限であり、任務であるが、問題は、そのご依頼額の中味であります。
このことについては、質疑の中で、与党議員からも的確な指摘がありました。つまり、内局に付与されている決定権のあるご依頼額は、全国のご門徒にご依頼する総ご依頼額ではなく、議会で議決した総ご依頼額を、25の教区に如何に、配分してご依頼するかという、各教区へのご依頼額を決定する権限が内局に与えられているということです。なお、そこに、より公平性と公明性を確保するために、全国門徒戸数調査が重ねて行われているところです。
総ご依頼額は、相続講金等を議決して議会で決めることであり、内局の権限の及ぶものではありません。議会で決めたものを、勝手に5億円減額するというのは、内局の権能を大きく逸脱する内局の暴挙であります。◎ 内局の執行権は、議会の議決を背景とする
どうも、総長の説明と答弁を聞いていると、本気で、内局には、議会で決めた予算額に縛られることなく、ご依頼額を決めることが出来るという思いがあるようです。そこで、何を根拠にしてそのように言えるのかと問えば、宗憲第44条であるという。確かに、第44条には、「宗務執行の権限は、内局に属する」と、宗務執行権が謳われています。
しかし、見落としてはならないのは、その後に説かれている第47条であります。そこには、「内局は、宗務執行について、宗会に対し連帯して責任を負う」とあります。少しわかりにくいですが、議会は内局が宗務執行にあたって、連帯責任を負うというものです。では、なぜ、議会が、宗務執行にあたって連帯責任を負うのか。それは、議会が議決した予算や条例を根拠に内局は宗務を執行するからであります。内局が執行権を行使できるのは、議会で議決した範囲においてのことであり、議会が議決しているから、議会が同時に、執行にあたって連帯責任を負うのであります。宗務執行権は、議会の議決に裏打ちされているということを表わします。
そのことは同時に、議会が議決していないことを執行する権限は、内局にはないということを意味します。議会の議決なき、第44法の行使は、執行権の乱用に当たり、宗憲違反であります。◎ 議会の連帯責任なきご依頼
20年度、宗派ご依頼につきましては、議会で議決した46億8千万円余りのご依頼額を、内局の独断で5億円減額して、41億8千万円余りを、全国のご門徒にお願いしました。しかし、このご依頼額については、議会は連帯責任を負いようがありません。議会で決めたことではないのですから。
ご依頼というのは、全国のご門徒にとって、宗門とお一人おひとりの関係を結び直し、宗門人としての自覚を思い起こして頂く具体的なツールであります。そして、そのご依頼額の妥当性については、僧侶の代表の宗議会と門徒の代表たる参議会において、必要な事業と行事を精査し、そのために要する金員を算出しているのであろうという宗会に対する信頼によって担保されているのではないでしょうか。
ところが、20年度のご依頼は、宗会の議決を経ていません。したがって、ご依頼額の妥当性と正当性について、内局は、全国のご門徒お一人おひとりに、説明して回る義務があります。なぜなら、議会制を取ることで、僧侶代表の宗議会と門徒代表の参議会において、審議・議決することで、ご門徒の声によって決めたという形を取り、決まったことはご門徒の総意であるとみなすことが出来るので、ご門徒に説明する必要はありません。しかし、議決を経ていないということは、そこになんらご門徒の意思は反映されないのですから、勝手に決めた内局は、お一人おひとりに説明責任を果たさねばならないからです。
さらには、宗門にとって肝要な宗報である「真宗」には、本年度ご依頼についての一言の言及もありません。このことを、どのように理解すればいいのでしょうか。質疑の時に、「真宗」への掲載を要請しましたが、ご意見として伺いますという全く当事者意識の欠如した答弁しかありません。内局は、大谷派における議会制をどのようにみているのか。この度の問題をあまりにも軽く見ているのではないかと危惧されるところであります。内局の反応
我々が質問し、問題点を指摘しても、総長の反応は、「あなたの考え方はまちがっています」あるいは、「見解の相違です」ということで、考え方の違いで、済ませていこうとしています。問題ありません、宗憲違反ではありませんと言い募れば済んでいくとでも思っているのでしょうか。
我が宗門には、立派な宗憲はあるのですが、その宗憲に適合しているかどうかを審査する機関がありません。そこで、今回のご依頼額の処分のあり方だけではありませんが、宗憲に則っているかどうかを審査する場を、議員と外部から法的知識のある方にも参画していただいて設置することを要望したいものです。このことは、与党議員の要望にもありました。最後に
私たち大谷派の教団は、血みどろな教団紛争の末、宗門人自らの懴悔のうえで宗憲を獲得しました。その宗憲は、まずもって「何人の専横専断を許さず、あまねく同朋の公議公論に基づいて行う」ところから始まります。今回の5億円減額問題は、議会を無視し、宗憲の第44条をもって、内局の専権事項であると主張する総長の危うさを露呈させました。この問題は、宗議会正副議長はじめ、宗議会・参議会の多くの議員が看過出来ることではないと声を上げています。第44条は、どこまでも第47条にいうところの議会の議決を欠いては成り立ちえず、何人も勝手に宗門運営は出来ないのです。
「ご依頼金が安くなったからよかろう」との声があることも仄聞していますが、そうではないでしょう。これは、大谷派議会の存在意義、そのものが問われる問題であります。―参考として―
19日の説明会で、参加者の要請もあり、かつて、宗議会正副議長が総長に申し入れた内容が、当時のメモを副議長が読み上げる形で明らかにされました。参考資料として、ここに記します。
《 正副議長による内局に対する申し入れ 》
・宗憲に抵触する恐れがある
6月の宗会後1週間も経ないときに、経常費御依頼額を宗会で決定した額から、さらに5億円減額することを内局の独断で決め、議員に発表し教務所に通達した。さらなる減額決定についてコロナ問題の厳しさを挙げているが、宗会後一週間の間にコロナ過に関する寺院の状況に大きな変化はない。この内局決定は、宗憲第94条及び第95条に抵触する恐れがあるのではないか。特にこの度の予算の議決に当たっては、宗務総長、財務長演説で経常費御依頼額の減額について、具体的に示し、且つ不足財源を平衡資金の融通にゆだねる等の財政方針に基づき議決された予算であるにもかかわらず、これと異なる財政処理を断行したばかりか、歳入不足を補う目途が立たない事態に及ぶ恐れがあることは、宗会議決の予算を蔑ろにしたのではないか。
・平衡資金の誤用を招く
「平衡資金の使用も視野に入れた補正予算を立て、臨時宗会を招集して」(総発147号2020年7月1日付)と述べているが、これは使用条件の逸脱である。「平衡資金の使用」は会計条例第41条に限定されています。当局はさらなる5億円減額処置を自ら決定し、その歳入不足という穴埋めのために、平衡資金の使用を前提とすることは、会計条例第39条及び第40条の規定に逸脱するのではないか。
・会計条例改正の議論が全くない中での発言
当局関係者の話によると、この平衡資金の使用に当たっては、「会計条例の改正を同時に行うので問題ない」と言っていると私(副議長)が仄聞しています。非常に重要な条例改正について、何の相談もなく、議会の議論も踏むことなく、いとも簡単に改正が行われるが如き発言は問題なのではないか。軽率であり議会軽視ではないか。
・事後承諾は宗憲違反の可能性
「補正予算を組む」との表明は既に議決された財政方針に基づく予算と異なる執行・処理をし、そのために生じる歳入不足を平衡資金の使用に依存しなければならないので、会計条例を同時に提案して補正予算を組むという方法、つまり後に臨時宗会に諮るというのは、「事後承諾」を求めることではないか。予算執行の「事後承諾」などありうべからざることである。
・公議公論を尽くしてほしい
既に、慶讃法要について予算総額が当局の判断で減額され、続いて社会福祉事業も何の議論もなく突然発表され、そして何の相談もなく突然中止する旨が表明され、今回も又議会の承認もなくさらなるご依頼の減額がされたことは、宗憲前文にある宗門運営の根幹の一つ「この宗門の運営は、何人の専横専断をも許さず、あまねく同朋の公議公論に基づいておこなう」ことに3度も抵触している。殊に中外日報による当派の「社会福祉事業中止」の記事は当局及び当派の評価を大きく下げたことは歪めないのではないか。当局は、同朋会運動に立ち返り、宗憲の精神にのっとり宗務を遂行されるよう強く要請するものである。
・問題処理として
このような事態に立ち至り、宗憲第47条「内局は宗務執行について、宗会に対し連帯して責任を負う」の規定にのっとり、宗議会並びに参議会に対し説明責任を果たし、財政処理の問題是正を図られるよう、その時期と方法について至急明確にされたい。